販促デザインの役割において、
コピーの重要性は写真などのビジュアルと同等か、
時にそれ以上になります。
「言葉と絵」はコミュニケーションの最も根本的な要素ですから、
これは当たり前のことではあるのですが、とりわけ
商材のシズルを分かりやすく魅力的に訴求する
キャッチコピーやキャッチフレーズは露出も注目も多いもので、
広告・販促の世界に限ってみても、
数々の“名コピー”と呼ばれるものが
広く一般の方々の記憶にも残っていたりします。
今回はそんな“コピー”をテーマに選びました。
ただ「広告界の歴史的コピー」的なものは、
皆さんもいろいろな場所で見聞きすることが多いと思いますので、
今回はもう少しターゲットを狭めた業界
「ゲーム業界」に的を絞って、歴史に残る素敵なコピー(独断)を
紹介していこうと思います。
※調査不足により、表記の誤りなどがあるかもしれませんが、先にお詫びしておきます。
【その1】しんみり・ほっこり系 ~心に沁みるフレーズ~
エンディングまで、泣くんじゃない。(MOTHER)
僕が、ゲームの名コピーと言えば?と問われたら
何をおいてもまず思い浮かべるのがこれです。
コピーライターの糸井重里さんが制作に携わった「MOTHERシリーズ」、
その1作目の広告に使われたコピーです。
短くシンプルな文章ながら、
このゲームに詰まっているであろう様々なドラマを想像させます。
「エンディング」というゲーム的な言葉と
「泣くんじゃない」のウェットな印象が、
程よいバランスでお互いを引き立て合っています。
てっきり糸井重里さんのコピーかと思い込んでいたのですが、
「きれいなおねえさんは、好きですか」などを書いた一倉宏さんの作でした。
続編では、MOTHER2で「大人も子供も、おねーさんも。」、
MOTHER3で「奇妙で、おもしろい。そして、せつない」というコピーを
糸井重里さん自身が生み出しています。
最後の一撃は、せつない。(ワンダと巨像)
前作「ICO」と合わせて、その静的で独特な空気感が評価の高い
「ワンダと巨像」のコピーです。
僕自身、発売当時TVCFをよく目にしましたが、
敵である巨像がゆっくりと崩れ落ちる映像や
物悲しい雰囲気が今でも記憶に残っています。
なお作家の宮部みゆきさんが心酔して小説化もしたという
前作「ICO」のコピーがこちら。
この人の手を離さない。僕の魂ごと、離してしまう気がするから(ICO)
「手をつなぐ」という重要なゲームシステムに絡めた
とてもピュアで綺麗なコピーです。
こういったしんみり・ほっこり系の、情緒的なコピーは
ゲーム界隈では比較的ポピュラーな系統かと思います。
他にも今回初めて知ったものをいくつか。
― 死んでもきみを守りたい。たとえ魂になろうとも ―(ファントムブレイブ)
このゲーム内で、
主人公の少年は本当に死んで魂になってしまっています。
つまり、これが比喩ではなく事実を語っているという点が印象的です。
世界は救われる、彼女を失えば(テイルズオブシンフォニア)
世界の存亡とヒロインの命を天秤に掛けるストーリーの本作。
最初にポジティブなことを言っておいて、
後半で覆すところが素敵。
はじめてなのになつかしい、そんな旅に出会えるの(ポケットモンスター 金・銀)
一番のポイントは最後の「の」。
この一文字でコピー全体が非常に柔らかく、可愛く、
親しみを感じるものになっているのが面白いな、と思います。
【その2】ワクワク系 ~少年少女の冒険心をかき立てる~
忘れられない冒険になる。(グランディア)
さぁ、夢と絆を始めよう(グランディア3)
ちょっと照れくさくなるくらい爽やかなコピーですが、
少年少女の大きな夢や仲間との絆、
ワクワクどきどきの物語と主人公の成長etc.といった
“冒険物”の王道ともいえるグランディアシリーズには
飾らない真っすぐな言葉がピッタリはまります。
見渡す限りの世界がある(ドラゴンクエストVIII)
日本を代表するドラクエシリーズの8作目ですが、
それまでの真俯瞰からの見下ろし視点ではなく、
現実に近い視点で広大な3Dフィールドを動き回れることを売りとして、
ユーザーのワクワク感をかき立てました。
誰かが待っている。誰かを待っている。(FINAL FANTASY XI)
ドラクエの向こうを張るビッグタイトル、
ファイナルファンタジー。
その11作目は、シリーズ初のオンラインゲームでした。
不特定多数のプレイヤーが協力し合い、
同じ世界で旅をするMMORPGの醍醐味を表現したコピーです。
一狩り行こうぜ!(モンスターハンターシリーズ)
友達同士集まってわいわい楽しもう、という
同シリーズの代名詞となったフレーズ。
はじめてTVCFで目にしたのはPSPでブレイクした時だったような。
その前のキャッチフレーズは「肉、喰ってるか?」でした。
【その3】恐怖系 ~ホラーゲームのコピー~
あなたのせいで、死体が増える(かまいたちの夜)
ストーリー分岐の非常に多い推理ゲーム。
プレイヤーの選択により
凄惨な殺人事件が次々に起こる
悲劇を表したコピーです。
どうあがいても、絶望(SIREN)
問答無用の絶望感です。
何はともあれ「すごく怖いゲーム」ということが
よく伝わります。
人か、祟りか、偶然か(ひぐらしのなく頃に)
人の仕業かオカルトか、はたまた?
謎めくストーリーと原因の見えない恐怖を煽りながら、
“答えをみつけろ”と推理を促してもいるように感じます。
【その4】パワフル系 ~にじみ出る強い意志~
俺より強い奴に会いに行く(ストリートファイターII)
闘うために ここにいる(ストリートファイター IV)
世界中の格闘家達を操作して戦う
人気アクションゲームのストリートファイター。
闘うことしか見ていない、求道者のようなストイックさを感じさせる
ハードボイルドなコピーがよく似合います。
俺を返せ!(どろろ)
ひたすら強いコピーですが、
手塚治虫さん原作の漫画をゲーム化した際に
使われたものです。
魔物に奪われた自分自身の身体の部位を
取り戻そうと戦う主人公・百鬼丸の
怒りや決意が叫びとなって現れています。
【その5】ドキッ系 ~言葉のインパクト~
死ぬがよい。(怒首領蜂 大往生)
ゲームタイトルの読み方は「ドドンパチ だいおうじょう」です。
本作は“画面面積の9割以上が敵の弾”という状況がしばしば起こる、
“弾幕系”に分類される高難度のシューティングゲームですが、
このコピーには難易度に対する強い自信がうかがえます。
「大往生」とかかっているところも素敵ですね。
君は世界を救えない(リンダキューブ)
巨大隕石による世界の滅亡が確定しているゲームですが、
シリアスな内容をさらりと言ってのける、
あっけらかんとした清々しさが
本タイトルの空気感を表しています。
プレゼントに最悪(せがれいじり)
聞き慣れた言葉を覆すインパクト。
本タイトルの特長であるシュールさや
バカバカしさが上手く表れています。
(確かに、プレゼントされても困るゲームです)
47人フりまくれ!(AKB1/48 アイドルと恋したら…)
人気アイドルグループAKB48の1人と恋人になるために、
逆説的に他の47人を“フりまくる”ゲームということで、
現実ではあり得ない状況を
上手いことショッキングに表したコピーです。
【その6】ユーモラス系 ~くだらないけどクスッときちゃう~
だんな、IIだね。(アルカノイドII)
駄洒落です。
大山のぶ代さんが得意なことでも有名な
ブロック崩しゲーム「アルカノイド」。
その続編の広告で使われたコピーです。
ちなみにこの広告は、お寿司屋さんのカウンターにトロが二貫、
「II」の形を模して、大将に差し出されている
そんな瞬間を切り取ったビジュアルで、
その大上段には江戸文字で大きく「あるかのいど」の文字。
単純に奇をてらっているようにも思えますし、
アルカノイドが“通好みのゲームである”ことを
表しているのかも知れません。
旧ソ猫を噛む(MiG-29 FIGHTER PILOT)
駄洒落その2。見た瞬間に脱力しますね。
MiG-29とは旧ソ連の戦闘機の名前ですが、
このMiG-29を題材にしたゲームの、
説明書に書かれているキャッチコピーです。
ちなみに、「猫」はアメリカのF-14(トムキャット)の
ことではないか、という見方もあるようです。
お父さん、お母さん、
就職は決まってないけど、
働く喜びが分かりました。
(ウルティマオンライン)
MMORPG「ウルティマオンライン」の販促として、
雑誌でシリーズ掲載された広告のコピーです。
ただ戦士として戦うだけではなく、
装備品を生産したり、家を建てたり、
他人と売買を行ったりといった
ゲーム内行動の自由度やプレイヤー同士の交流を指して、
まるでもう一つの世界で生活しているかのような
仮想現実性の高さを表したコピー。
この広告はシリーズで6種あり、
他にも次のようなコピーが使われました。
たかし、
裁縫にめざめたって、
ホントか?
聞いておばあちゃん、
あんなだったオレが
人の命助けたんだよ。
オヤジ、
自分の家を持てるようになるまで
こっちでがんばるよ。
※すべてゲーム内での話です(笑)
以上、長々とお付き合いいただきありがとうございました。
むしろゲームと縁遠い方に、なにか興味の湧くものがあったなら
今回の企画は大成功、といったところです。
最後におまけの番外編をひとつ。
上述のものとは違い“ゲーム機本体”にまつわるコピーですが、
ここ数年で一番僕の印象に残っているコピーです。
【おまけ】
ソニーの、PlayStationVitaという携帯ゲーム機がありまして、
グラフィックなどかなり高性能な機器ではあるのですが、
正直あまり売れ行きがよくない状況が発売から続いております。
そんな苦境を打破すべく、
ある夏の時期に打ち出された販促用のコピーがこちら。
ソーレソレソレ(PlayStationVita)
「気分」に振り切る潔さが大好きです。