都内に住んでいる割になぜか通勤の徒歩時間が往復合計2時間ほどになるため、
連日日差し・暑さに苦しめられています、岩澤です。
みなさんはいかがお過ごしでしょうか。
と、時候の挨拶から入りましたが全く今回のテーマとは関係ありません。
先日、何の前触れもなく急に思い出した幼少時代の娯楽があるのですが、
思い返せば今になるまでそれについて誰かと話題にしたことがなく、
またネットやその他メディアで目にした記憶もなく、
「そういえばあれって、最近どうなってるんだろう」と今回リサーチしてみることにしました。
と、いうことでみなさん「ゲームブック」をご存知ですか?
ちなみにセガナでこのアンケートを行ったところ
もちろん知ってる:4人/全然知らない:7人という結果でした。
(年齢層まちまち)
《遊べる小説》
知らない方のために、まずはゲームブックって何?というところを簡単に説明します。
体裁としては小説と非常に似ている文章ベースの読み物ですが、
小説と異なるのは、物語の随所に「選択肢」が登場するところです。
選択肢にはページ数とパラグラフナンバーが付随していて、
読者は選択肢のいずれかを選んだ上で、指示されたページで
その結果と続く物語を知ることになります。
たとえばこのような感じです。
〜洞窟の狭く湿った通路の先に待っていたのは、小部屋のような場所だった。
多少歪んだ円形の空間の中央には、腰の高さ程の台座があり、
その上には古びた壺が置いてある。
君はゆっくりと近づいて・・・
†壺を手に取った → P64/(A)へ
†中を覗き込んだ → P30/(C)へ
こういった工程を繰り返して、物語のエンディングを目指すのがゲームブックの遊び方です。
この、選択による“物語の分岐”こそがゲームブック最大の特徴で、
一度読み終わっても「あそこで違う方を選んでいたらどうなっていたんだろう」と
繰り返し何度も読み返すのが醍醐味と言えます。
(まぁ、ページ数の都合上、割と選択→即バッドエンドという展開も珍しくないのですが)
《ゲームブックの思い出》
僕の小学生時代って両親がテレビゲームに対してとても厳しくて、
数年口説いてやっと買わせてもらったファミコンも
週に1時間までという、かの高橋名人も耳を疑うであろうルールがありまして。
抑圧されたゲームへの欲の、行き先の一つがゲームブックだったのです。
当時なぜかファミコンのゲームタイトルをゲームブック化したものが多く出ていて、
僕がよく読んでいたのが「がんばれゴエモン」とか「ドラゴンクエストシリーズ」でした。
ドラゴンクエストのゲームブックはちょっと凝っていて、
確かアイテムやらレベルなどのフラグ分岐もあったような。
(本の中にその辺を書き留めるページがあり、読み直すたびに消しゴムで消して使っていました)
他にうっすら記憶があるものは漫画形式のものとか、
姉の雑誌の付録についていた?ピラミッドを探検する話とか。
当時は色々なところでゲームブック的な形式を目にしていたように思います。
《ゲームブックの歴史》
そんな、僕にとっては馴染みが深かったゲームブックなんですが、
冒頭のアンケートによれば知らないという人も多いようで。
ウィキペディアによるとゲームブックが日本に上陸したのが1984年頃らしいのですが、
そこから人気が出て、盛んに出版されたのは90年初頭までという短期間で、
以降は急速に勢いを失ってしまったそうです。
(これを知ったためにアンケートを取ってみた次第なのですが)
丁度僕が読んでいた頃が流行っていた時期だったようですが、
ただこの90年代初頭という衰退の時期については無理もないように思います。
当時はファミコンやスーパーファミコンに代表されるコンピューターゲームが
目まぐるしく進化していたゲーム界激動の時代で、中には「サウンドノベル」という、
まさにゲームブックを音響とビジュアルでグレードアップさせたような
ジャンルも生まれた頃でした。
僕にしてもゲームブックを楽しんではいましたが、それもファミコンができない鬱憤からでしたし、
燦然たるコンピューターゲームの前では、ゲームブックの存在が霞んでしまうのも
仕方のないことだったでしょうね・・。
《それからのゲームブック》
そんな時代の激流に飲まれた(主観です)ゲームブックですが、
その後はどうなったのでしょう?Amazonなども併用して調べてみました。
■名作の復刻
90年初頭で一度ブームの終焉を迎えましたが、
21世紀に入り、散発的なリバイバルの動きが起こっているようです。
ちょっと横道に逸れますが、
そもそもゲームブックはTRPG(テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム)という
ものから派生して確立されたと言えそうです。
※形態としての起源は諸説あります
TRPGとは、複数人で、紙とペン、サイコロなどを囲んで行うもので、
ゲームマスターと呼ばれる先導役と会話しながら
プレイヤーが自分の役割(ロール)を演じる(プレイ)ゲームです。
これの一人プレイ用や初心者向の入門書として生まれたのがゲームブックで、
上記でリバイバルされたのはそのような、
どちらかと言えばゲームブックのファンに向けたタイトルでした。
ご時世的に電子書籍化もされていまして、
ページ(パラグラフ)ジャンプの機能やレベル・フラグ管理など
デジタルの機能を活かしたものになっているようですが、
そういった仕掛けを加えるほど、仕様としてはゲームに近づいていくので、
ターゲットがより限定的なっている感がありますが…
ファン向けとして振り切ったと言うことなのかもしれません。
復刻以外で2000年以降にも新作なども出ているようですが、
新興のレーベルが立ち上がっては間も無く休眠・終了したり
といった動きも目立ち、業界全体としては
あまり芳しいとは言えない状況のようです。
■子供向けのゲームブック
上記のようなコアな趣向とは別に、近年発行された少年少女に向けと思しきものも
いくつか見つけることができました。
発売日を見ると概ね年に数冊(各シリーズで年1冊程度?)の頻度で発売されるようで、
全体として、細々と続いているという印象ですが。
〜amazonでみつけたシリーズタイトル〜
◎脱出ゲームブック/立東社
「リアル脱出ゲームの魅力を詰め込んだ」とのことで、
パズルや謎解き要素もミックスしているそうです。
◎たったひとりのサバイバルゲーム!/KADOKAWA
ジャングルや砂漠、雪山といった自然を相手にアドベンチャーするシリーズで、
2016年から始まったようです。個人的にすごく面白そう。
サバイバル知識も入っているそうです。
◎ミラクル・タイム・アドベンチャー/ポプラ社
タイムスリップをテーマにドラゴンなどのファンタジー要素を取り入れたシリーズのようで
なかなか興味深いですが2013年に3冊発売されたきりのようなので、終わってしまったのかな。
《ゲームブックの価値とは》
今回記憶を掘り起こしながらいろいろ調べてみる中で
ゲームブックの魅力を考えていたのですが、自信を持って言えることは
「多くの子供にとってとても良いものだ」ということです。
ゲームでもあり小説でもある、という、見方によってはどっちつかずなメディアではありますが、
選択と分岐の要素は、作品への没入を容易にする上「先の展開を予測する」という
思考のトレーニングとしても機能しますし、
色も音もない活字の世界は、想像力の喚起によって
時にコンピューターゲームを遥かに超えるビジョンを脳裏に描きます。
もちろん、大人になっても趣味としてゲームブックを楽しむことはあるでしょうが、
生まれた時から様々なインタラクティブなメディアに触れている、そんな子供達にこそ
一度は経験して欲しいものだと思いました。