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「ダイエー」は来年2015年1月1日よりイオンの完全小会社になることを
新聞、TVの報道で知った。
2018年ころには、全国474店舗の看板から全ての「ダイエー」マークが
なくなり総合スーパーの「ダイエー」は姿をけすことになるらしい。
今年2月のブログ「適正価格はどこへいった?」で、70年代の流通と日本
人の消費行動、消費意識を根底から変えた二人の事業家を紹介した。
1人は「文化価格」、「イメージ価格」で新しい流通スタイルを確立した
故・堤 清二 / 辻井 喬氏である。
そしてもう1人は、「価格破壊」のダイエー創業者、故・中田功である。

このニュースで感じたことは、故・中田功氏もさることながら、「株式会社
ダイエー」を1人の人間の人生終焉に見立てて複雑な気分になった。
「会社」は法人格をもち、人と同様に人格をもつと考えれば納得がいく。
この二人は、対極の流通スタイルを確率した異色の経営哲学もった
経営者であり、「一時代の寵児」と言っても過言ではない。

中内功氏は、「For the Customers よい品をどんどん安く消費者に提供
する」をテーマにして、GMS=ゼネラルマーチャンダイズストアを日本で
初めて導入、全国にスーパーマーケットのネットワークを展開、イオン
モールの原型、ショッピングセンターの基礎をつくった。

同時に日本の小売り販売価格を根底から変えた。
「既存価格を破壊することが主婦の店・ダイエー」の存在価値である。
中内功氏は、日本の小売り業をスーパーマーケットGMSを造り上げ、
1972年、三越を抜いて小売業売上高トップになり、1980年、日本で
初めて小売業界の売上で一兆円を達成した。

中内氏は、「価格の決定権を製造メーカーから消費者に取り返す」こと
を信念として、日本の小売り価格(店頭の販売価格)を根底から変えた。
流行語にもなった「価格破壊」である。
「いくらで売ろうとも、ダイエーの勝手、製造メーカーには文句を言わせ
ない」という姿勢を貫いた。

ダイエー_03

当然、既存大手メーカーとの対立を巻き起こした。

1964年、松下電器産業(現・パナソニック)とテレビの値引き販売をめぐって、
ダイエーが松下電器の製品を希望小売価格からの値下げ許容範囲だった
15%を上回る20%の値引きで販売を行ったことがきっかけだった。

松下電器は、ダイエーへの商品供給を停止して、ダイエーの値下げに
対抗した。この時の松下幸之助は、「儲けるには高く売ることだ。今後、高い
水準に小売価格を設定するので、これを守りなさい。安売り店への出荷は
停止する」であった。

これを受けて、ダイエーは松下電器を相手取り、独占禁止法違反の疑いで
裁判所に告訴する一報、「BUBU」というブランドの13型カラーテレビを
当時としては破格の安さの59,800円で販売した。
いまでは珍しくもない「プライベートブランド(PB)」の登場である。
メーカーの協力が得られないため、スーパー「ダイエー」はPB商品を
日本で初めて販売した。「ダイエー」のオリジナルブランド「BUBU」であった。
結局、この対立は、松下幸之助没後の1994年に松下電器が折れる形で
和解となった。この対立は「30年戦争」とも呼ばれた。

多様化する消費者ニーズに応えるため、流通革命により創業以来一貫して
「価格破壊」をスローガンに拡張路線を進め、一時はグループ企業が
300社にのぼった。「価格破壊」とともに質への需要などニーズが多様化すると、
「ダイエー」はホテル、大学、プロ野球、出版、金融など事業分野の多角化に
乗り出した。1975年には「ダイエーローソン株式会社」を設立、コンビニエンスストア
業界へ進出した。
それまで、製造業や銀行などの他業種より格下と見られていた流通業を名実共に
業界をリードする存在となった。

1990年代後半になって、バブル景気の崩壊により地価の下落がはじまった。
地価上昇を前提として店舗展開をしていたダイエーの経営は傾きはじめる。
また、店舗の立地が時代に合わなくなり、業績も低迷。さらに展開していた
アメリカ型ディスカウントストアのハイパーマートが失敗、当時の消費者意識が
「安く」から「品質」に変わったこと、家電量販店などの専門店が手広い展開を
始めたことなどから、ダイエーは徐々に時代の流れに遅れをとった。

90年代後半には、ジャスコを経営するイオン、イトーヨーカ堂などが業界を
リードするようになった。当時、世間からは「ダイエー」には何でもある。でも、
欲しいものは何もない」と揶揄されるようになった。
中内自身も晩年、「消費者が見えんようなった」と嘆くこともあったらしい。

ダイエー_06

「価格破壊」は、日本の流通に革命的な変化の引き金となった。
いまでは当たり前の商品価格は市場が決める、オープン価格は、それまで市場での商品価格は
メーカー主導であった。消費者利益に貢献したこの価格破壊は、長期的にみると
メーカーの開発力を削いで行くことになっとも言える。
行き過ぎた価格破壊による価格戦略は売り手にも買い手にも利益を生まない。
安い価格は消費者としてはありがたいことではある。しかし、同時にメーカーや
生産者からみると、本来得られる利益がなくなることを意味する。
ブーメランのように、消費者は立場を替えると,メーカーや生産者でありその企業の
従業員でもある自分たちの不利益として戻ってくる。
そのためには、最終消費者の満足に耐えられる適正を追求していくことが唯一の
解決方法だと思う。極端な価格(お値引き)競争は止める時期がきていると思う。

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