こんにちは。岩澤です。
今年あたりからニュースなどで『eスポーツ』という言葉を盛んに耳にするようになりました。
乱暴にいうと要はゲームの対戦を言い換えたものですが、
ゲームに馴染みのない人たちの間でも「オリンピックの正式競技に?」など物議をかもしていたり、
いちゲーム好きとしては興味深く様子を伺っています。
今回はこのeスポーツについて、国内外の様子や、またプロゲーマーについても書いてみようと思います。
今回僕のライティング力不足で非常に文章量が膨らんでしまいました・・(文章読了だけで10分ほどかかるかも知れません)
世界のeスポーツ事情
そもそもeスポーツという言葉、日本では馴染みが薄いものですが、
世界的に見るとアメリカ・中国・韓国で特に盛んなようです。
世界大会(多くはアメリカで行われる)の賞金が億単位のものも珍しくなく、
またゴールデンタイムにTV中継されたり、2017年の調査によるとeスポーツの視聴者は
全世界で4億人弱という規模にのぼるそうです。
eスポーツで扱われるゲームタイトルは当然ひとつというわけではなく、多岐に渡ります。
SmartCastというeスポーツ情報サイトが賞金総額や視聴時間などから
タイトルの格付けを行なっていますが、本年度版では25のタイトルが3段階に分けられています。
ゲームルールを知らなければ観戦を楽しめないのは他の競技と同様です。
僕としては知らないものが多いのですが、逆に言えば世界的にはこれだけのタイトルが広く知られ、
親しまれているということです。
なお2018.10時点で賞金額のトップはDota 2というゲームの大会『The International 2018』で、
総額は日本円にして28億円以上だそうです。凄い額ですね・・
eスポーツのオリンピック競技化騒動
そんなeスポーツが今年日本で一気に広まった話題がこちら。
正直何が起こっているのかよく知らなかったので調べたのですが、
まず起きた事実として、アジアオリンピック評議会(OCA)が主催する、
アジア版オリンピックとも呼ばれる『アジア競技大会』、
その第18回大会がこの夏開催され、そこでデモンストレーション競技として
eスポーツが取り上げられました。
もともとこのアジア競技大会は囲碁や(カードゲームの)ブリッジ、
シャンチー(将棋のようなゲーム)といった、フィジカルスポーツ以外の競技も行われており、
次回2022年大会ではeスポーツが正式競技として採用されたそうです。
そしてこのデモンストレーションのうち『ウイニングイレブン 2018』というサッカーゲームで、
日本代表の杉村直紀選手と相原翼選手のコンビが見事金メダルを獲得したのです!
しかし、この背景に各団体のゴタゴタが潜んでおり・・さまざまな意見、立場が交錯しているようです。
調査不足もあって詳しくは省きますが、
現状日本オリンピック委員会(JOC)はeスポーツを正式にスポーツとは認めておらず、
今回の日本代表選手も“JOCが派遣する正式な日本代表ではない”という扱いだそうです。
また今回選手の選出を行なった『日本eスポーツ連合(JeSU/2018.2設立)』についても、
制定するプロライセンス制度の必要性や、認定タイトルの現ラインナップなど、
業界内外から疑問の声が上がっている状況。
そして国際オリンピック委員会(IOC)も先日、eスポーツがオリンピックの競技に加わる可能性を否定。
なんだかぐちゃぐちゃですが、この問題は今後も波乱を予感させます。
※IOCは“暴力や差別を助長する”としてeスポーツを否定していますが、eスポーツはスポーツかという議論を差し置いても、
そもそもオリンピック正式競技化には、使用されるゲームタイトルの著作権という非常に大きな問題があります
「プロゲーマー」という仕事
さて、そんな日本では波乱含みのeスポーツと合わせて語られることが多いのが「プロゲーマー」です。
「遊んでお金がもらえるなんていい身分だね」などと揶揄されてしまうこともある肩書きですが、
その実態はどのようなものでしょう。まずは収入源について考えてみました。
<プロゲーマーの主な収入源>
■スポンサー料
■大会賞金
■各種イベントや番組・記事などの出演料
この他にもたとえば専門学校など教育機関でゲストとして授業料を得るケースや
事務所や特定企業でかつての高橋名人のように
「ゲーマー社員」として給料をもらうケースもあるでしょう。
別の職業にもついている、いわゆる掛け持ちのプロゲーマーさんもいらっしゃいます。
また昨今ゲーム実況動画が世界的に流行していますが、
動画配信での広告収入も含めるとすればゲームをしてお金を稼ぐという意味で、
ゲーム実況者もプロゲーマーと呼べるかもしれません。
まぁプロ/アマの線引きが曖昧なのはゲームやスポーツに限らずどの業界でも同じですね。
ただ日本では法律上の問題(賭博罪や風営法など)で
海外のような高額賞金の派手な大会は開けないのと、ゲーム自体に対する悪印象も根強いため、
なかなかプロゲーマーの社会的地位向上は難しいのが実情です。
熱い世界
ここから完全に趣味の押し売りになりますが、プロゲーマーの実態と、
この世界に少しでも興味を持っていただければという思いで、
僕の好きなプロゲーマーを2人紹介させていただきます。
eスポーツの中の「対戦型格闘ゲーム」というジャンルの一線で活躍されていて、
世界的にも大変有名な方々です。
・・・
梅原 大吾(37歳)
アメリカではThe Beastの愛称でも親しまれる、日本人プロゲーマーの代名詞的存在です。
格闘ゲームの大会では、14歳で日本一・17歳で世界一を獲得し、
まだ日本にプロゲーマーという概念も知られていない2010年4月に
スポンサー契約でプロゲーマーになりました。
数々のドラマチックな逸話を残していて、その一つ
2004年、世界最大級の格闘ゲーム大会『Evo』大会での超高難度プレイは
動画再生数がギネス記録に認定されています。
(ウメハラ氏はこの他にも2つのギネス記録を持っています)
▶︎ 背水の逆転劇(Evo 2004 「ストリートファイターIII 3rd STRIKE部門」準決勝戦)
https://www.youtube.com/watch?v=pS5peqApgUA
2:43 あたりからのプレイのことです
日本人プロ格闘ゲーマーの先駆者であるウメハラ氏は、
さまざまな苦悩や葛藤を経てきたこともあってか、ゲームや自身の生き方に
強い信念があり、eスポーツをショービジネスとしてしっかりと捉えた、
「見てくれる人を楽しませること」「自分が楽しんでプレイすること」を
大切にした姿勢が素晴らしいと思います。
・・・
ときど(谷口一/33歳)
「東大卒プロゲーマー※」ということでメディアの話題にされやすい方。
※卒業後に大学院へ進んだ後、中退してプロゲーマーの道を進んだ
ウメハラ氏のプロ宣言がきっかけでプロの道を意識するようになり、同年の2010年11月にスポンサー契約。
在学中のプレイは勝利に向けて徹底的に合理性を追求するスタイルで
「強いが見ていて面白くない」と評されたことも多かったそうです。
「ときど」というプレイヤーネームもそんな闘い方が由来となっていますが、
そのスタイルも、プロ転身後しばらくして方針を改めることになったそうです。
そんなときど氏は昨年のEVO2017で見事優勝。世界一の栄光を手にしました。
▶︎ EVO2017優勝
https://www.youtube.com/watch?v=2XkvPOOw734
冷徹なプレイスタイルとは裏腹に性格的には非常に熱く、ゲームに対する姿勢はストイックそのもの。
自身の著書によると「食事と睡眠、ジム通い以外の時間ほぼ全てゲームに費やす」という徹底ぶりで、
そのジム通いも、長時間ゲームをするための体力づくりというまるで求道者のような生活です。
※ちなみに今年、ウメハラさんはTV番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』で、ときどさんは『情熱大陸』で特集されたので、
機会があればご覧いただくと面白いと思います。
・・・
僕がプロゲーマー“個人”について興味を持ったきっかけがこの二人なのですが、
ときど氏は以前からウメハラ氏に対して強い“こだわり方”を見せていて、
それは単に先駆者への尊敬というものを超えた、ある種の崇拝とも感じるものがあり、
業界を牽引していくウメハラ氏と、その背中に熱い執念を燃やすときど氏という、
2人の構図にロマンを感じています。
プロゲーマーと一括りで言っても、一人ひとりが違った考え方・姿勢を持って臨んでいます。
それは他の競技においても同様だと思いますが、
とりわけまだまだプロ人口が少なく発展途上の世界だからこそ、一人ひとりの個性が際立って見え、
またプレイヤー同士に因縁・関係性が生まれやすいのだと思います。
そんな、個性がぶつかり合った熱いドラマが
今年、『獣道・弐』という格闘ゲーム大会において起こりました。
ウメハラ氏主催の国内大会なのですが、ここで、ときど氏がウメハラ氏に
対戦を申し出たのです。
▶︎ ︎獣道・弐 梅原大吾 vs ときど PV
https://www.youtube.com/watch?v=SgvXT4m0V4A
ときど氏は前年に世界一に輝きプレイヤーとして勢いに乗っており、
一部では「ときどの実力はウメハラを超えている」とも囁かれる状況。
しかし、そんなときど氏をして“全然追いつけていない”“後ろ姿が見えない”と言わしめるウメハラ氏。
一方のウメハラ氏は余裕しゃくしゃくの様子です。
(まぁPVなので演出も多いと思います)
ちなみにPV内でときど氏が引き合いにする“トラウマになった試合”というのは、
2013年に行われたウメハラ氏と韓国プロゲーマーの試合。
ときど氏は練習相手としてウメハラ氏にコテンパンにされ、
また実際の試合も見て、“プロってこのクオリティ求められるの?”
“こんな差を付けないと逆にプロとして認めてもらえないのか”と、
自身のプロとしてのあり方を見つめ直すようになったそうです。
2013年 ウメハラ vs Infiltration
https://www.youtube.com/watch?time_continue=2023&v=VKxNHooO5Mk
(実況音声と書き込まれるコメントにテンション上がります)
ウメハラ氏の存在全てに影響を受けて来たときど氏が、
遂にウメハラ越えに挑戦する、という大注目のカードとなりました。
ルールはプレイヤーの実力が一番出やすいと言われる「10本先取」。
上述Infiltration戦と同じルールで、ウメハラ選手が最も得意とするものでもあります。
結果は 10対5 で、ウメハラ氏の勝利。
PVで冷ややかに宣告した通りになりました。
“ゲームの中でぐらいは勝ちたかったんですけど、また出直してきます”
勝負後のインタビューで、ときど氏は震えた声でそう一言だけ絞り出し、
うなだれて涙を流しました。
隣に立つウメハラ氏も、主催者という立場から冗談も交えながら飄々としてはいましたが、
負ければ世代交代が進んでしまう一戦。決して楽な気持ちで戦った訳ではありません。
負けたら“悔しい、じゃ済まない”と、ある意味ときど氏よりも重いプレッシャーを背負い、
勝った後は喜びよりも“(自分は)まだ格闘ゲームをやっていていいんだと思った”そうです。
▶︎獣道・弐 ウメハラときど戦 直前/直後のインタビュー
https://www.youtube.com/watch?v=xQFNmPj2hoU
※更にその後、ウメハラ氏と仲間内の試合振り返り/戦略や勝負への思いなど
https://www.youtube.com/watch?v=OE_mN0yF5WA
・・・
以上のエピソードをはじめ、僕自身今回調べ直して初めて知ったことが多いのですが、
知れば知るほどその独特な世界観に惹かれ、できるだけ多くを伝えたいと思ってしまったため
こんなに長文になってしまいました。。すみません。
世界的なeスポーツ全体からすれば格闘ゲームは一端に過ぎませんが、
いわば黎明期とも言える今まで、なんの指標もない中から、何人ものプレイヤー達が
試行錯誤しながらショービジネスの世界を築いてきて、僕たちの知らないそこで
いくつものドラマが生まれているのだと思うと、「いい大人がゲームに負けて泣いている」
そんな場面も、滑稽だなどと笑い飛ばすことはできません。
どんなものも、無理解や偏見や好き嫌いだけで価値のないものと切り捨ててしまうのは
もったいないことだと思います。
「eスポーツはスポーツか」「プロゲーマーという生き方」賛否両論あってよく、
eスポーツに対する理解を広め、またゲーム業界もより良い環境に向かって成長していくために、
今後も議論は続けていって欲しいと思います。